依頼品は欠けている箇所が幾つかあり、漆の艶も落ちています。
そして依頼者は輪島塗の工法で修理を希望されていました。そのため布着せを施し、一から下地を行います。
布着せを行うためにはまず以前の下地を研ぎ落とさなくてはなりません。そうしなければ布がうまく接着できないからです。
布着せとは木地の欠け易い上縁、高台を布を貼って補強することです。布はのり漆を用いて張り付けますがなかなか難しい作業です。
木地と布を貼った段差を埋めるために惣身漆を付けます。惣身漆とはケヤキの木粉を煎ったものにのり漆を混ぜたものです。
地の粉を入れた下地漆を付け、乾かし、研ぐを三度繰り返します。
地の粉には一辺地粉(鏡粉)、二辺地粉、三辺地粉とあるのですが、数が増えるごとに細かい粉になっていきます。仕上がりに近づくほど表面は綺麗になります。
(写真は二辺地付け)
外側は溜塗りに仕上げて欲しいという依頼でしたので、上塗りの前に朱漆を塗ります。
朱漆が乾いたら水研ぎし、上塗りになります。
外側に朱合漆、内側に黒漆と朱漆をそれぞれ上塗りして修理は完了です。