依頼品には立派な蒔絵が付いていますが、その蒔絵に深い傷が通っています。
今回の修理では傷跡が残らない様に仕上げる為もったいないですが、蒔絵を落とし全体を塗り直します。
ちなみに蒔絵の図案は修理前に蒔絵師さんに録っておいてもらいます。
柱(じ)など琵琶本体から外れるものを外します。
柱とはギターでいうフレットのことだそうです。
破損箇所を小刀で削った後、刻苧を付けます。
刻苧を付けた破損箇所に次は錆漆を付けました。
立派な蒔絵がもったいない気がしますが、綺麗にするため仕方ありません。
錆漆を付けた琵琶を水研ぎしました。蒔絵も全て研ぎ落とします。
この時蒔絵の下から下地ではなく、別の蒔絵の層が出てきました。(写真を撮るのを忘れました。申し訳ありません)
どうやらこの琵琶は以前にも同じ箇所が大きく割れ、修理されていたようです。
以前の修理ではあまり下地を付けなかったようで、補修に使った薄い木の板も出てきました。
下地がほとんど付いていない部分があるなか中塗りはできないので、もう一度刻苧漆を付けました。
刻苧漆が乾いたら破損箇所を磨きます。そしてもう一度錆漆を付けました。
二回目の錆付けは破損箇所だけでなく広い範囲に付けていきます。これは表面を平らにする為です。
今後修理の跡が出ない様に、今回の修理は刻苧付け、錆付けを二回行いました。
錆漆が乾いたら水研ぎした後、中塗りを入れました。
一見すると傷は分からなくなりました。
しかしまだ細かい凹みなどがあり、この後2~3回中塗りをしなくてはなりませんでした。
琵琶に柱(じ)という部品を接着しました。
中塗りの後に接着したのはその方が綺麗に仕上がり、仕事も簡単だからです。
ちなみに柱の上の部分は何も塗らないでほしいとの依頼だったので、青いマスキングテープで保護しています。
上塗りを行う。
一回では全てを綺麗に塗ることはできないので、何回にも分け上塗りをしました。
修理前に録っておいてもらった蒔絵の図案を、蒔絵師さんに付けてもらいます。
大きな亀裂は無くなり、新品同様の美しさなりました。
依頼者に琵琶を納めるととても満足していただきました。
初めての仕事で不安もありましたが、綺麗に仕上がり良かったです。